町田樹選手の引退発表と世界選手権代表辞退に思うこと

町田樹選手が、衝撃的な引退発表をしました。

全日本選手権後、2015年の世界選手権に出場する日本代表を発表するセレモニーの途中、選出された町田選手がその場で代表を辞退し、現役引退を発表したのです。

今後の進路は、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学し、研究者を目指すとのこと。

引退についてスケート連盟も事前にまったく把握しておらず、町田選手の代わりに急遽無良崇人選手が代表に選ばれることになりました。

あまりに突然のことで驚きが隠せません。大好きなフィギュアスケーターがまた一人、リンクを去ってしまうと思うと寂しいです。

町田樹がリンク上で突然の引退発表　早大大学院へ進学

— Yahoo!ニュース – 町田樹がリンク上で突然の引退発表　早大大学院へ進学 （デイリースポーツ）

credit: Mike Bailey-Gates

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なぜこのタイミングなのか

なぜ、引退発表がこのタイミングだったのか、非常に気になります。

せっかく代表に選出されたのだから、世界選手権が終わってからでも良かったのでは。町田選手の実力なら、世界選手権でメダルを取れる可能性は高かったです。

進学の手続き上の問題なのか、それとも単純に、興味の対象がスケートから離れてしまっただけなのか。

もしくは、スケート連盟へ当て付けなのか。

全日本選手権では、SPで全力を出し切っても点数が伸びなかったこともあって、邪推してしまいます。

もし選出されなかったら、引退せずに続けていたのでしょうか。

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得点が伸びないから？

ほぼ完璧な演技をしても転倒した羽生結弦選手に勝てないので、嫌気が差してやめてしまうのではないか、といった意見も非常に多いです。

演技を作品と位置づける町田くんにとって採点がすべてとは思えませんが、しかし、演技が正しく評価されなければ、競技を続けるモチベーションを保つのが難しくなることもあるでしょう。

第九を完成させてほしかった

今季の町田選手のフリープログラムの「第九」はすばらしい作品だったので、ぜひ完成した演技を見たかったです。

世界選手権で見られるかもしれないと思っていたので、ショックは余計に大きい。

今後プロとしてリンクに立つことはあるのかもしれませんが、競技としての演技とは別物になるので、結局完成した町田選手の「第九」は永遠に見られないということになってしまいそうです。

スケートアメリカの「第九」が、ここまででベストということになりそうですね。

全日本のFPで実況が無かったことは関係あるのかな

全日本選手権の町田選手のフリーの演技だけ、アナウンサーによる実況中継がされませんでした。（フジテレビ）

これも憶測を呼びます。単純なトラブルなのか、町田君が「最後だから実況なしで見せたい」と言ったのか。

ただ、それだとテレビ局の関係者に引退を伝えていたことになるので、その可能性は低そう。

でも偶然にしては不思議なタイミングだなーと思います。

経済的な理由？

町田選手には大きなスポンサーがつかないことに疑問を持つ人は少なくないです。しかし、スポンサーがつくと引退時期を自由に決められなくなるので、町田選手はわざと契約をしていないのだろうという見方が多いです。

引退の決意と金銭的な事情も無関係では無いと思いますが、直接的な理由ではない気がします。

ちなみに町田くんが高校生の頃は、親御さんの支援で新幹線でリンクのある学校に通っていました。

スケート連盟に不信感があったのか？

「12月28日の朝に決断した」とのことですので、伝える暇が無かったのかもしれませんが、何の前置きも無く、世界選手権代表発表のあの場で突然引退を発表するでしょうか。

代表をお披露目する前には、選出された選手は控室に集められてセレモニーの説明があるはず。そこでも黙っていたとなると、何かスケート連盟に対する抗議の意味が含まれていてもおかしくないと思います。

少なくとも、進路や引退時期について、選手と連盟が相談しあえるような信頼関係、人間関係が構築できていないのは確かですよね。

エキシビジョンの町田×リプニツカヤはもう見られない

先シーズン、ロシアGP、ソチ五輪、世界選手権など、ことあるごとに町田選手とリプニツカヤ選手がエキシビジョンでペアを組んでいた（組まされていた？）のはファンの間で知られています。

この微笑ましいカップルがもう見られないことは非常に寂しい…。

早稲田大学大学院スポーツ科学研究科って、何を研究するの？

元野球選手の桑田真澄さんもスポーツ科学研究科を修了されています。桑田さんは一年制で、町田君は二年制を志望しています。

桑田さんの修士論文は、「『野球道』の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究」。

町田君の場合は、フィギュアスケートを哲学の視点から見た研究でもしそうですね。町田君が書く論文、読んでみたいです。

ただし、昨今では早稲田の研究者、論文にはいろいろ問題があるので、そこは心配。

今後、フィギュアスケートの解説や、コーチはするのだろうか

独特のコメントが人気の理由でもある町田くん。ぜひテレビでも解説しているところを聞きたいです。

選手としての実績としては充分ですし、需要も多いでしょう。それと、哲学を持った振り付けや演技構成を、後進にも伝えていって欲しいです。

町田選手、今までお疲れ様でした

町田樹くんは、1年半前、坊主頭でした。それはソチ五輪代表獲得にかける並々ならぬ決意で、その後は「最後の1枠は自分が取る」と有言実行しました。

あの頃、メキメキと頭角を現し人が成長する過程を見せてくれたし、今回、去る時も強烈な去り方です。

彼の「東のエデン」は、ファンの間でずっと後世に語り継がれると思いますし、また、この電撃引退も今後ずっと記憶に残るのは間違いないです。

フィギュアスケートの枠を超えてこれだけ愛される個性を持つ選手は非常に稀で、もったいないですが、決めたことなら応援したいと思います。

今まで本当にお疲れ様でした。ありがとう。

追記　町田選手の引退メッセージ

フィギュアスケートをスポーツマネジメントの領域で考察する研究者として、社会から真に必要とされる人材になるべく、真摯に新たな道を歩んでいく所存です。

— 町田樹からのメッセージ｜関西大学・アイススケート部

関西大学のHPに掲載された町田選手のメッセージを見ると、実に綿密に計画され、やるべきことをやり遂げた引退だったと解りました。

町田選手が言及するスポーツ選手のセカンドキャリアの問題は、野球やサッカーなどの大きなスポーツでも以前から指摘されてます。

競技をすること自体にお金のかかるフィギュアスケートでは、練習環境などにも課題がたくさんありますし、実際に体験してきた町田選手がスポーツマネジメントを研究することは非常に意義深いことだと思いました。

また、引退後もアイスショーへ出演をするかもしれないというコメントはうれしい限りです。

引退の経緯に関しては、以下の記事がよくまとまっています。
→Yahoo!ニュース – 町田、電撃引退の真相 （THE PAGE）

追記　他の選手への影響

無良：町田樹選手は小さい頃からずっと一緒にやってきた仲間。
小塚：町田選手のことからまず話したい。

— 小塚や無良が代表会見で町田引退に言及｜コラム｜フィギュアスケート｜スポーツナビ

無良選手も、小塚選手も、一時は引退を考えたことがあります。

今回町田選手の引退に接し、連鎖的に自身の引退を強く意識してしまうのではないかと心配しましたが、与えた影響はポジティブなものだったようです。

小さいころからライバルだった無良選手は、突然の引退発表後、バックヤードで町田君とお互い涙ながらに抱き合って「頼むぞ」と託されていました。代表の代役が無良選手になったというのも縁を感じます。

小塚選手も代表会見で開口一番町田選手のことに言及し、「樹がいないとしても僕たち選手一同、チームジャパンとして責任感を持って戦っていきたい」と決意を新たにしていました。

また、後輩として一番町田選手を慕っていた田中刑事選手もツイッターでコメントしています。

全日本のことが吹っ飛ぶぐらい衝撃だったのが町田先輩の引退でした。 いろいろ衝撃でしたが、先輩らしいカッコいい幕引きだと思いました。 憧れであり、人間性も尊敬できる素晴らしい先輩でした。 そんな先輩から託された思いを強く受け止め頑張ります。 町田先輩お疲れさまでした。

— 田中刑事 (@deka_1122) December 29, 2014

こうやって他の選手の気持ちにポジティブな影響を与えた町田選手の引退の仕方は、誰にでも出来るものではないと思います。